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障害を持つ子が地域で生活するために~岡山で暮らす障害者の親なきあとに向けて

成年後見制度がはじまったとき、多くの人は「これで障害者の親なきあとの解決策になる」と考えました。
しかし、制度発足からかなりの年数が経過しても、障害者の制度利用はさほど増えていません。
もちろん成年後見がフィットして実際に利用している障害者はいますが、それは今のところはほんの一部で、なかなか浸透していないのが現実です。
成年後見制度には、財産管理とともに身上監護が役割としてありますが、こちらはどうしても付随的なものとなります。

さまざまな福祉サービスには、在宅時、移動時、施設内など、シーン別のケアはあっても障害者本人の日常生活を全体として見守る仕組みがありません。
グループホーム生活やひとり暮らしをしている障害者にとって、または将来的に地域生活を考えている障害者とその家族にとって、具体的にこれが困っているという事柄よりも、漠然とした不安、いつ何が起こるかわからないといった不安の方が大きいのではないかと思います。
そういった不安に応える施策として、以下に紹介するものは、利用者のニーズに合ったものではないかと思います。

先進的な見守り制度

横浜市には「障害者後見的支援制度」というものがあります。
2010年10月から4つの区を対象に始まり、現在では横浜市の18行政区すべてで実施されています。地域において確実に効果を上げ、評価されている証拠だと思います。
支援の内容ですが、横浜市のホームページによると、日常の見守りを希望する障害者(とその家族)、将来の生活について相談したい障害者(とその家族)を対象に

1)障害のある人を支援している人や、地域住民の方などが、この制度に登録した人を日々の生活の中で気にかけたり、定期的な訪問をしながら、日常生活を見守る
2)障害のある人とその家族の、将来の希望や漠然とした不安などの相談を受ける
3)生涯にわたり障害のある人に寄り添いながら、その人の願う地域での暮らしが実現できる方法をいっしょに考える

といった支援内容になっています。
できないこととしては、以下の内容となっています。

1)身体介助や家事援助などの直接支援
2)金銭やたいせつな書類の管理
3)入院時の身元保証や手術などでの医療同意行為

親の会が立ち上げた権利擁護支援センター

2014年度から「社会福祉法人 東京都 手をつなぐ育成会」が、権利擁護支援センターという組織を立ち上げました。
こちらは行政として取り組んでいる横浜市と違い、「東京都 手をつなぐ親の会」が母体となってできた組織です。

「親がいなくなったら、誰がこの子の世話をしてくれるのだろう」
「資産をこの子に残したいけれど、どうしたらいいのかわからない」
「地域でずっと安心して暮らすにはどうすればいいのだろう」
などの相談を親の会で受け付けて、関係機関や「みまもり隊」という支援者と協力しながら、本人のバックアップをしようという組織です。

このように、従来の法制度では拾いきれないニーズを個々の自治体や親の会など任意団体が、サービス主体として担う動きも始まっています。
実施する地域の広がり・サービス内容の広がりに期待したいですね。

地域で安心して生活するための自立生活援助

障害者総合支援法の改正により、2018年4月から自立生活援助という障害福祉サービスがスタートしました。
これは障害者が地域で自立して生活することを援助するサービスで、ひとり暮らしをしている障害者を定期的に訪問し、食事や掃除・洗濯など生活面の課題や、経済面、健康面、近隣との関係などについて問題がないかを確認し、必要な助言や支援機関との連絡調整などをおこなうものとなっています。

スタートしたばかりの制度なのでこれからどのように広がっていくかは未知数ですが、障害者が地域で安心して生活する方法がひとつ増えたことは歓迎すべきことだと思います。

障害者が地域で生活するために

障害者が地域で生活するためには、周囲の見守り、支援は欠かせません。
本人の生活を支えるために、なるべく多くの人に関わってもらうことが大切です。
子どものことをなるべく知ってもらうためにも、福祉サービスはぜひ積極的に利用してください。

業務や役割をもって支援してくれる人以外にも、親の会や家族会といった関係の中で、あるいはご近所や顔見知りレベルで、いざという時に頼りになってくれる人が現れるかもしれません。
地域で生活する障害者を支援してくれる人、それは地域で生活する人々全員ではないでしょうか。

親としてやるべきことは、障害をもった子どもが今ここにいることを、できるかぎりたくさんの人に知ってもらうことだと思います。
これは、「何かあったときには、うちの子どもをよろしく」と地域に人にお願いしておきましょう、という意味ではありません。

具体的な支援を期待するのではなく、顔を覚えてもらう、道ですれ違えばあいさつをする、という人がちょっとずつ増えれば、あなたのお子さんがひとり暮らしをすることになったとき、住んでいる町やお店で困ったことがあったら、見かけた人が声をかけてくれるかもしれません。助けを呼んでくれるかもしれません。
あいさつできるひとが多いだけでも、お子さんは地域で落ち着いて暮らせるかもしれません。

親は多くの場合、子どもより先になくなります。子どものことは誰かに託していくことになると思います。
親であるあなたがいるあいだに、ぜひその環境をつくってあげてください。
どうぞ遠慮せずに、お子さんが地域の中で生活していることを知ってもらってください。

あなたとお子さんが地域の中で、あいさつする人が増えてきたら、あなた自身もきっと不安な気持ちが減ってくるはずです。


「自分の死後、子どもは問題なく生きていくことが出来るのか」
そんな多くの親が抱く『親なきあと』への不安も、障害がある子の家族にとってはひときわ大きなものとなります。

『親なきあと』への準備として、何に対し、どんな準備をおこなえばいいのかわからない。

私たち『親なきあと』相談室では、こうした漠然とした悩みを抱えている状況を打破するため、お悩みに対する具体的な課題を明確にするお手伝いをさせていただきます。

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