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親なきあとに備えて~生活が苦しくなった時の支援を知る~

親なきあと、特に施設などに入らずひとり暮らしをしている障害者は、親がさまざまな支援体制を準備していたとしても、経済的に苦しくなってしまうこともあり得ることです。
今回は、そういった場合の支援策となる制度をいくつかご紹介します。

亡くなってしまったあとは親が支援することはもうできませんが、子どもにある程度の判断能力がある場合などは、これらの制度について本人が知っておくことも大切です。
いざという時、これから紹介する制度を利用できるような準備をしておきましょう。
また、本人をサポートしてくれるきょうだいや親族などにも、情報を共有しておくといいかもしれません。

生活福祉資金貸付制度

低所得の世帯、障害者世帯、高齢者世帯を対象に、消費者金融を利用しても返済が見込めないなど、ほかの手段で生活資金を借りることが困難な場合、必要な資金を融資してくれる制度です。
例えば、障害者総合支援法の福祉サービスや自立支援医療を受けるにあたり、当面のお金がないといった場合には、福祉資金という名目でお金を融資してくれます。

貸付額は個別の必要性により、審査で決定されます。
保証人がいない場合は年利1.5%、保証人がいれば無利子という、非常に低利子による融資が受けられます。

また、緊急小口資金貸付という制度もあります。
こちらは低所得の世帯を対象に、最大10万円を無利子・保証人なしで貸し付けてくれるものです。

これらは給付ではなく貸付のため、返済が必要となります。
また、審査により認められなければ貸付は受けられません。
例えば、消費者金融は金利が高いから乗り換えたいなどといった理由では認められませんし、一定の返済能力も問われます。
利用したい場合の相談窓口は、地域の社会福祉協議会になります。

生活困窮者自立支援制度

生活困窮状態にある方がどうやったら自立に向けて動き出せるかの支援プランを作成したり、一定期間家賃相応の額を支給して就職に向けた支援をおこなったり、家計状況の「見える化」をはかり根本的な課題を把握して相談者が自ら家計管理できるよう早期の生活再建を支援する制度です。

生活困窮者に対しあまりお金を使わずにできる範囲の支援をおこない、生活保護になる一歩手前でとどまって生活再建をしてもらおうという、2015年に施工された比較的新しい制度となります。

地域によって支援内容や専門員のスキルにばらつきがあるようですが、今後うまく機能していけば、どうしていいのかわからないという人には頼りになる制度となるのではないでしょうか。

生活保護

どうしてもこのままでは生計が維持できないとなった場合、最後のセーフネットとして生活保護制度があります。
生活保護は、憲法に規定されている「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障するとともに、その自立を助けるためのものです。

生活保護を受けられる条件

生活保護は、国が定める生活保護基準によって計算された最低生活費を収入が下回っていることが条件となります。
この生活保護基準ですが、住んでいる地域・家族構成・年齢・障害の有無などによって細かく設定されています。
これにより算出された最低生活費と、世帯の収入と認定された額を比較して、収入認定額が査定生活費より少なければ、その差額が生活保護費として支給されることになります。

生活保護の種類

・生活扶助 食費や光熱費など、日常生活にかかる費用
・住宅扶助 アパートなどの家賃
・教育扶助 子どもの学校にかかる費用
・会議扶助 介護サービス利用料の本人負担なし
・医療扶助 医療費の本人負担なし
・出産扶助 出産のための費用
・生業扶助 職業訓練など仕事に就くために必要な経費
・葬儀扶助 葬儀にかかる費用

生活保護により支払われるお金は、上記の性質の8つがあります。
このうち通常の生活費となるのが生活扶助、鎮宅住宅の費用となるのが住宅扶助で、受給される金額は、この2つが大きいものとなります。
教育扶助は義務教育の子どもを扶養している場合に給付されます。
介護扶助と医療扶助は、医療や介護サービスを受けた場合にお金を払わなくてもいいという仕組みです。
ほかの3つは、臨時的に支払われる給付となります。

生活保護が認められない場合

生活保護の申請の際、他にお金を手に入れる手段がある場合には、まずはそちらを優先しておこなうことを求められます。
例えば、以下が例となります。

援助してもらえる親族がいる

自分の収入だけでは苦しくても、親やきょうだいなど、親族から生活の支援を受けられる場合は生活保護の対象から外れます。
全面的な援助ではなくても一部の支援であれば、その金額が生活保護費から差し引かれることになります。
本人が生活保護申請をした場合、親やきょうだいなど三親等以内の親族には生活を援助できないかの問い合わせがいきます。
親族からの援助は強制ではないため、断ることはできますし、援助ができるというのであればその金額によって生活保護の対象からはずれるか、支給額が減額されます。

預貯金がある

預貯金は、一定額以上あれば資産とみなされ、申請が通らなくなる可能性も出てきます。
一定額の目安は、生活保護を受けた場合に支給される生活保護受給月額の半分となります。
わずかでも預貯金がある場合はまずそちらを生活費にあて、いよいよ生活が立ち行かなくなったら相談に来てください、ということのようです。

持ち家がある

家や土地を持っている場合、換金性が高いようなら、これを売却して生活費にあてるように言われます。
不動産は簡単に売れるとは限らないので、そういった場合は優先して生活扶助などが給付されます。
ただし、売却して収入ができた段階で受け取っていた生活扶助の変換を求められ、その結果やはり生活に困窮するようなら、引き続き生活扶助や住宅扶助などが給付されます。
なお、住宅ローンが残っている場合には自宅の処分が必要となります。
生活費のお金で、ローンを支払うことは認められません。

株や自動車など換金性の高い資産がある

株などの有価証券は換金性が高いため、まずは売却をします。
生命保険なども同様ですが、換金額が少額であれば、そのまま契約の継続が認められる場合もあります。
また、自動車なども持ち家と同様に売却をすすめられますが、障害者のいる家庭で通院に車が必要な場合や交通の便が極端に悪い場合などは、保有を認められることもあります。

生活保護の申請手続きの流れ

生活保護は、住民票のある市区町村の福祉事務所に申請します。
最初は福祉事務所にある生活保護相談窓口で、ケースワーカーによる面接がおこなわれます。
ここで生活状況などを説明し、今後の相談をします。
仕事をしていない場合は就労をすすめられたり、ほかに利用できる制度がないか検討したり、なるべく生活保護の申請をせずに生活できる手段を探すことになりますが、ほかに方法が見つからなければ、そこで申請をすることになります。
申請後、ケースワーカーが自宅を訪問し、世帯の資産や収入を調べます。
また、親きょうだいなど扶養義務者に連絡がいき、援助できないかどうかの確認がおこなわれます。
調査の結果、生活保護の適用が決定すると、原則として申請日の日から生活保護費が支給されます。

もし申請が却下された場合、通知を受け取った日から3ヶ月以内であれば都道府県に対して審査のやり直しを求める審査請求の申立てができます。
受給後はケースワーカーの家庭訪問があり、生活状況の調査がおこなわれます。これは抜き打ちでおこなわれることがほとんどとなります。

収入が増えたなどの変化があった場合や、働ける状況なのに求職活動をしていないといった場合などは、生活保護の打ち切りや辞退届を書くようにすすめられることもあります。

障害のある人が生活保護を受ける場合

障害のある人で、障害基礎年金を受け取っていない場合は、まず障害基礎年金の申請をするようにすすめられます。
そのうえで生活に困窮している場合、年金は収入とみなされるので、生活保護を受給する際には、本人が受け取れる生活保護費から年金の受取金額を差し引いた額が保護費として支給されることになります。

また、生活保護費には障害者加算という制度があり、身体障害者手帳1級、2級または障害基礎年金1級の該当者には約25,000円、身体障害者手帳3級または障害基礎年金2級の該当者には約15,000円が加算されます。
この加算金額は、地域によって変わります。


「自分の死後、子どもは問題なく生きていくことが出来るのか」
そんな多くの親が抱く『親なきあと』への不安も、障害がある子の家族にとってはひときわ大きなものとなります。

『親なきあと』への準備として、何に対し、どんな準備をおこなえばいいのかわからない。

私たち『親なきあと』相談室では、こうした漠然とした悩みを抱えている状況を打破するため、お悩みに対する具体的な課題を明確にするお手伝いをさせていただきます。

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ご相談お待ちしております。

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