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親なきあとに備えた金銭管理支援~日常生活自立支援事業と成年後見制度の違い~

障害を持つ子の親なきあとに備えた、日常のお金を支援する方法の一つとして、成年後見制度を紹介してきました。
そのもう一つの方法として『日常生活自立支援事業』があります。

これは、日常生活を営むうえで必要な福祉サービスを自分の判断で選択・利用することが困難な人を対象とした制度です。
判断能力に不安がある人の生活をサポートするという意味で成年後見制度と近いものがありますが、この二つの最も異なる点は、契約者本人の判断能力が必要か否かという点です。

契約を締結する判断能力はあるが、福祉サービスの利用や金銭管理が難しい場合には日常生活自立支援事業、契約に関する判断能力が不十分な場合は成年後見制度を利用する形となります。

日常生活自立支援事業のサービスの内容

日常生活自立支援事業では、契約に基づき、福祉サービスの利用に関する相談や助言、情報提供、金銭管理などの支援をおこない、利用者が安心して自立した生活を送れるようにサポートすることを目的としています。
基本サービスは福祉サービスの利用援助となりますが、オプションとして日常的な金銭管理サービス・年金証書や通帳などの書類等預かりサービスもあります。

例えば役所や銀行の手続きをひとりでするには不安な場合にアドバイスしてもらったり、いっしょに窓口についてきてもらう・通帳や印鑑の管理が不安な場合、金融機関の貸金庫に預かってもらうといった援助をおこないます。
利用料金は地域や本人の収入によって若干の違いはありますが、すべてのサービスを利用しても月額で3000円前後となっています。

日常生活自立支援事業の利用条件

日常生活自立支援事業の主な利用者としては、高齢の夫婦・ひとり暮らしの世帯・障害者がひとり暮らしをしている世帯・高齢の親と障害のある子の世帯などとなります。
このうち、判断能力が不十分なために福祉サービスの適切な利用が困難な人が対象となります。
ただし、利用を希望する本人との契約になるため、契約ができるくらいの判断能力は必要になります。

知的障害者である子どもに利用させたい場合、制度利用の契約をするのは利用者である子どもとなるため、まず子ども本人がこの事業の利用を希望していることの他、子どもに契約の内容を理解する能力が必要となります。
精神障害の人たちは、契約をするだけの判断能力がある人も多いため、成年後見制度よりこちらの方が向いている、という場合もあるかもしれません。

後見制度の利用を待ちたい人へのアドバイス

将来的には成年後見制度も必要なのはわかるけれど、元気なうちは子供のめんどうは自分で見たい。
そう考えている人も多いのではないでしょうか。
でも、体力や判断能力が衰えてきて、子どものめんどうを見られなくなるのがいつなのか、自分で認識するのはなかなかむずかしいのではないかと思います。
そんな時のために、親が元気なうちに、自分の判断能力が落ちてきたときに子どもの成年後見制度につなげられるような準備をしておきましょう。

具体的には、親が弱ってきたことを知ってもらえるよう、周囲にいろいろなつながりを持っておくことが必要です。
特に親ひとりと障害のある子どもだけで暮らしているケースでは、こうした準備がとても大切になります。

家族のSOSに気付いてもらうために

親の判断能力や体力が衰えてきたときに備え、これまでご紹介してきた制度をぜひ活用してみてください。
以下にその方法をご紹介します。

親が任意後見契約を結ぶ方法

母ひとり子ひとりの家族の場合、母親が自分の信頼できる人と任意後見契約を結びます。
その契約に、自分が弱ってきて契約が発効したら、子どもの後見申立てに関する条項をつけておくというやり方ができます。

今は元気で、障害のある子のめんどうを見ています。
でも私が認知症になってあなたが後見人になるときには、めんどうが見られなくなるでしょう。
その時は、この子の成年後見の申立ての件をお願いします。

というような内容の条項となります。
親の任意後見人は、子どもの後見の申立てをする権限は原則的にはないのですが、親族や行政などに

「私はお母さんの任意後見人になったのですが、障害のあるお子さんがいるので、この子の後見申立てをしてください」

と働きかけてもらえます。
結果、子どもへの支援が親から成年後見人に切れ目なくバトンタッチできることになります。

親権による任意後見制度の利用

また、子どもが未成年の場合は、親権による任意後見制度の利用も方法として考えられます。

例えば、親が未成年の障害のあるお子さんのため、親権による未成年任意後見契約を締結します。
任意後見契約は本人に判断能力がなければ締結することができません。
そのため、成年に達したあと後見人を必要とする時が来た場合は、家庭裁判所に法定後見の申立てをすることになります。
しかし、将来子どもに後見制度の利用が必要になった時、身近に頼れる人がいないと、家庭裁判所が後見人を決定することになります。
もちろん希望は出せますが、どういう人が選任されるか、といった不安はあります。

そこで、確実に子どもや自分たち家族のことをよく知ってくれている方々に後見人になってもらえるよう、親権があるあいだに契約をします。
この契約の場合、子どもを任意後見委任者とし、両親それぞれが法定代理人親権者、信頼するNPO法人などを任意後見受任者として、長期に渡って見守ってもらえる仕組みをつくり、公正証書を作成しました。

これは非常にレアは契約なので、後見人を受けてくれる法人を探したり、公正証書を作ってくれる公証役場に理解を求めるなど、いろいろとハードルもありますが、このような事例もあります。

親権による未成年任意後見については、その方法や注意点を『Officeニコ』のフェイスブックで詳しく紹介されているため、関心を持たれた方は検索してみてください。

地域でのつながりが大切

ここまでいくつかの準備や方法をご紹介してきましたが、もっともたいせつなのは、地域にたくさんのつながりをもっておくことだと思います。
親同士の集まりや近隣とのお付き合い・親自身の仕事や趣味のお付き合いなどで人との繋がりを持つことの他、地域の民生委員にコンタクトしておくことで、親の判断能力が衰えてきた時にはそのサインをキャッチしてもらいやすくなります。
社会との接点をなるべく多く持つことを心がけ、いざという時に、必要なルートにつないでもらえるようにしておきましょう。

さまざまな制度を知り、知識を蓄えておくことは大切です。
しかし、制度はそれを使う人がいなければ意味がありません。
親自身が衰えてきた時には、やはり地域の支援、人の支援がいちばん頼りになると思います。


「自分の死後、子どもは問題なく生きていくことが出来るのか」
そんな多くの親が抱く『親なきあと』への不安も、障害がある子の家族にとってはひときわ大きなものとなります。

『親なきあと』への準備として、何に対し、どんな準備をおこなえばいいのかわからない。

私たち『親なきあと』相談室では、こうした漠然とした悩みを抱えている状況を打破するため、お悩みに対する具体的な課題を明確にするお手伝いをさせていただきます。

まずは下記フォームよりご連絡ください。
ご相談お待ちしております。

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