子どもにある程度の判断能力があれば、受け取ったお金を日常的に自分のために使っていくことはできます。
そういった判断能力のない知的障害の子どもや、判断能力はあっても精神的に不安定で、症状が悪化しているときは支援がないと生活できない精神障害のある子どもには、その人に合ったサポート体制を準備しておくことが必要です。
成年後見制度は、お金を管理するための代表的な仕組みです。
成年後見制度とは、判断能力の不十分な人を保護するため、本人の行為を制限するかわりに、本人にかわって法律行為をする人を決めて、その人が一定の法律行為をする制度です。
障害のある子どもに利用する場合のポイントや、新しい情報についてお伝えいたします。
成年後見制度には3つの基本理念があり、この基本理念を守りながら本人を保護する制度となっています。
現存能力の活用
その人のもっている力を最大限生かして、自分らしく生きる
自己決定権の尊重
自分のことは自分で決めることができ、その意思をみんなが尊重する。
つまり成年後見人は代行決定をするのではなく、意思決定の支援をする
ノーマライゼーション
可能なかぎり地域社会の一員として、通常の生活が送れるような環境や仕組みをつくり出す
成年後見制度は判断能力が不十分な人の財産や権利を守るための制度ですが、基本理念にあるように、ただ保護して本人には何もさせないというものではなく、自分でできることは自分で決められるようになっています。
成年後見は2つの種類があります。
ひとつはすでに判断能力が不十分な場合の法定後見で、こちらは本人の判断能力の状況に応じて支援する人の保護のパターンが変わるという特徴があります。
また、もうひとつは今後に備えて契約を結ぶ任意後見です。
自己決定権の尊重、現存能力の活用という制度の理念に則り、それぞれの類型に応じて本人が自らできる行動や、成年後見人等が有する権限が違ってきます。
成年後見人には『後見』『保佐』『補助』の3種類があり、その判定は医師の診断によります。
成年後見制度の申立時に障害の程度についてかかりつけ医などが書いた診断書を添付し、家庭裁判所が類型を審判します。
制度に詳しくない医師の場合、後見類型にしてしまうという例もあるようなので、診断書を書く医師に対してお子さんのできることをきちんと伝える、あるいはそれとなくご家庭の希望を伝えるなどしてもかまわないと思います。
支援する人は、家庭裁判所の選任により、成年後見人、保佐人、補助人のいずれかとなり、この3つを合わせて『成年後見人等』と呼ばれます。
それぞれの役割等は以下となります。
常時判断能力の欠けた状態の人が対象となります。
対象者自体に判断能力がないため、対象者の判断に同意する、という行為は意味がありません。
後見人は、日用品の買い物など、日常生活に関する行為を除くすべての行為において取消権の範囲を持ちます。
また、財産に関するすべての法律行為の代理権を持ちます。
判断能力が著しく不十分な人が対象となります。
後見人は、借金や相続関連など、民法で定められた財産に関する重要な行為について、同意権を持ちます。
取消権についても同様で、借金や相続関連など、民法で定められた財産に関する重要な行為について取消をおこなう権利を持ちます。
代理権については、申立ての範囲内で裁判所が定める行為において、代理権を持ちます。
ただし、本人の同意が必要となります。
判断能力が不十分な人が対象となります。
借金や相続関連など、民法で定められた財産に関する重要な行為の中で、申立ての範囲内で裁判所が定める行為について、同意権を持ちます。
取消権についても同様です。
代理権については、申立ての範囲内で裁判所が定める行為において、代理権を持ちます。
同意見・取消権・代理権を行使する際にはすべて、本人の同意が必要となります。