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親なきあとの支出~固定費と割引制度について~

親なきあとに備えるためのご相談をいただく中で、どのくらいのお金を残してあげればいいのかわからない、という大きな不安への相談が多く寄せられます。
親である自分が亡くなったあと、障害を持つ子に必要なお金はどのくらいになるのか、どういった残し方・お金の渡し方を選べばいいのかがポイントとなってきます。

まずは、必要なお金をある程度把握するための最初の判断基準として、必要な生活費について考えてみてはいかがでしょうか。
生活費の中でも、毎月確実に、一定の支出が必要となる固定費がどのくらいになるのかを把握しておけば、お金に関する漠然とした不安もある程度軽減されるのではないでしょうか。

今回は、そんな固定費と障害者対象の割引制度について項目別に見ていきましょう。

固定費と割引制度

ごく一般的な固定費の項目をあげさせていただきます。
固定費の中には障害者を対象とした割引や減免措置などの制度があるものもあるため、しっかりとチェックしておきましょう。

国民健康保険の保険料

所得や世帯人数などによって計算されますが、市区町村によって計算方法が異なるため、住んでいる地域で金額が変わります。
国民年金の保険料と違い、障害者であっても国民健康保険料の免除の制度はありません。
ただし、所得額によって保険料が変わるため、障害基礎年金の受給以外に収入がない場合は、保険料自体はかなり安くなるはずです。
例えば、東京都世田谷区在住にて30代ひとり暮らし、収入は障害基礎年金2級のみの方の場合、年額で約4万円となります。
同じ条件で給与所得による年収が400万円の人の場合は、年額で約24万円の保険料になるため、かなり少ない負担額であることがわかります。

介護保険料

これは、本人が40歳になってから支払うことになる保険料です。
障害者支援施設に入所している場合、施設は介護保険適用除外施設のため、障害者は支払いを免除されます。
グループホームやアパートに住んでいる場合は、介護保険の保険料を支払う必要がありますが、こちらも所得によって金額が変わります。
先程の例で、東京都世田谷区在住にてひとり暮らし、収入は障害基礎年金2級のみの方が40歳になった場合、介護保険料として年間約15,000円が健康保険料にプラスされます。
年収400万円の人の場合は介護保険料は約5万円になるので、こちらも障害者の負担額はかなり少なくなっています。

光熱水費

電気料金/ガス料金/上下水道料金※

水道料金と下水道料金については、障害者であれば基本料金が減額になる場合があります。
条件や割引額は自治体によって異なるため、お住まいの地域の役所でご確認ください。

税金

住民税/固定資産税

自動車関連費

自動車税※/駐車場料金/ガソリン料金

生計を同じにしている世帯に障害者がいて、障害者のために自動車を利用するという場合は、購入の際の自動車取得税、ならびに毎年かかる自動車税の減免措置があります。
自治体によって必要な書類が違っていたり、申請の際に民生委員による証明が必要なため、お住まいの地域の自動車税事務所に問い合わせてみてください。

通信費

固定電話料金/携帯電話料金※/インターネット料金

携帯電話の基本料も、障害者手帳を持っていれば割引の対象になります。
割引の内容などは携帯電話会社や地域によって変わるため、各携帯電話会社やショップに問い合わせてみてください。

交通費

(施設等に通う場合などの)交通機関利用料金※/タクシー料金※

バス、JRや私鉄の運賃は、障害者手帳の提示で本人と介護者1名もしくは本人のみが半額料金となります。
スイカやパスモなどのIC乗車券をそのまま使用すると、通常の料金が引かれてしまうため、バスを利用の際は運転手さんに手帳を提示して半額料金に変更してもらったり、鉄道を利用する際は半額の乗車券を購入して手帳を提示しながら改札を通る、といったひと手間が必要になります。

航空運賃や船舶乗船券も割引があります。各社の規定や手帳の種類などによって割引率や対象者などは異なります。

タクシーは、障害者手帳を提示するとメーター表示料金が1割引になります。また、多くの自治体では福祉タクシー券を交付しており、金額は年間で3万円前後のところが多いようです。この交付制度がない地域もあるため、お住まいの役所の障害福祉課などに確認してみてください。

タクシー乗車の際の注意点

タクシーのメーター表示料金が1割引になる制度について、運転手さんによってはその制度を知らない人もいます。
また、タクシー券と料金1割引は併用できますが、運転手さんによって認識がまちまちでもあるため、タクシーに乗る段階で、タクシー券の利用と障害者割引利用の希望を伝え、運転手さんがよくわからないようであれば、無線で会社に確認をとってもらうとようでしょう。

上記以外にも、交通費に関しての割引があります。
重度の知的障害者を乗せて介護者が運転する場合、全国の有料道路の料金が5割引になる制度があります。
ただし、あらかじめ役所の福祉担当窓口で割引証の交付を受ける必要があります。
また、対象となる自動車の範囲は自家用車に限るなど、いくつかの条件があるため、お住まいの市区町村に確認してみてください。

各種保険

生命保険料/損害保険料

その他

NHK受信料※/他

NHKの放送受信料にも、障害手帳を持っている人への減免措置があります。
手帳を持っている人がいて、世帯全員が住民税非課税の場合は全額免除となります。
また、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳のそれぞれ重度の等級のものを持っている人が世帯主の場合は、半額免除となります。
減免措置を受けるためには、自治体やNHKの窓口にある申請書に必要事項を記入して自治体に提出し、免除事由の証明を受けてから、その証明書をNHKに郵送する必要があります。

ただし、ここでご紹介する減免措置等は、障害者だから、手帳を持っているからというだけで、自治体の方で自動的に請求額を減らしてくれるものではなく、申請や手続きをしないと受けられないものとなります。

障害を持つ方が自分で資料などを請求したり手続きをおこなうのはなかなか難しいため、実際にひとり暮らしを始める際には、ご家族や支援者の方が力を貸してあげてください。


「自分の死後、子どもは問題なく生きていくことが出来るのか」
そんな多くの親が抱く『親なきあと』への不安も、障害がある子の家族にとってはひときわ大きなものとなります。

『親なきあと』への準備として、何に対し、どんな準備をおこなえばいいのかわからない。

私たち『親なきあと』相談室では、こうした漠然とした悩みを抱えている状況を打破するため、お悩みに対する具体的な課題を明確にするお手伝いをさせていただきます。

まずは下記フォームよりご連絡ください。
ご相談お待ちしております。

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