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「親なきあと」セミナーシリーズ①/親なきあとのお金の話

セミナー『親なきあとのお金の話』総合編~後見制度~

障害のある子の親を対象とした、総合相談窓口

子を持つ親の心配ごととして、自分が亡くなった後の子どもの生活はどうなるのだろう、という悩みを持たれている方は少なくはありません。

障害のある子の親の場合はなおさらで、特に金銭管理を自分でおこなうのが難しい子に対して、どれくらいのお金を残しておけば不自由なく生きていくことができるのだろうという悩みを持たれている方が多くご相談にいらっしゃいます。

そういった金銭的な悩みを含め、障害のある子の将来に対して、漠然とした多くの悩みを抱えているのではないでしょうか。

それぞれの悩みごとについて、漠然としているためにどこに相談すればいいのかわからないまま、毎日頭を悩ませている方も多くいらっしゃいます。

『親なきあと相談室 岡山事務局』は、そういった漠然とした悩みが多い障害のある子の将来について、相談窓口がひとつなので、いろいろな課題への対策を提示することができます。

特に岡山に住む方に対しては、地域に根付いたご提案をおこなうことができるため、具体的な悩みが見えてきたら、専門家を紹介し個別に対応いたします。

「親なきあと」のお金の話

この【障害のある子の「親なきあと」セミナー】では、特に「親なきあと」のお金の話に注目して、わかりやすく解説をおこなっていきます。

8月18日(日)、岡山きらめきプラザで開催された「親なきあと」セミナーでは【「親なきあと」の「親あるとき」にできること】をテーマに、総合的なお話をさせていただきました。

セミナーには、県内外から10名弱の方々にお集まりいただきました。
お子さまが障害を持たれているご相談者様本人だけではなく、相談支援者の方にもご参加いただき、親なきあとのために用意すべき事について、それぞれ簡単にではありますが解説をおこないました。

「親なきあと」にお金を残す、3つの準備

「親なきあとに向けて、しっかりとお金を残したい。どれくらい残せばいいでしょうか?」

そんな質問をいただくことが本当に多いです。
親として、子どもに不自由を感じさせない人生を歩んで欲しい。
そんな願いから、なるべく多くのお金を残してあげたいと考えるのが親心というもの。

ただし、ただ闇雲に多くのお金を残すことが必ずしも大切なこととは言えません。
もっとも大切なのは、障害者である本人や、その支援者のために確実にお金を残す仕組みを用意しておくことです。

この仕組の部分をおろそかにすると、相続の際や金銭管理の面で、親なきあとに問題を残す原因となってしまうことも考えられます。

確実なお金の残し方・活用方法

抑えておきたいのは三点。
『後見』『信託』『遺言』となります。

親なきあとを迎える前に、この三点についてしっかりと考え、準備しておくことで、親なきあとの作業負担や不利益などを避けることができます。

障害のある子の成年後見制度

成年後見制度は、精神上の障害(知的障害、精神障害、認知症など)により判断能力が十分でない方が不利益を被らないよう、家庭裁判所に申し立てをしてその方を援助してくれる人を付けてもらう制度です。

成年後見人の仕事は大きく分けて「財産管理」と「身上看護」の2つとなります。

◆財産管理
現金、預貯金、不動産の管理/収入・支出の管理/有価証券等の金銭商品の管理/税務処理(確定申告、納税等)

◆身上看護
医療に関する契約/施設への入所契約/介護に関する契約/生活、療養看護に関する契約

成年後見制度を利用される方の利用動機として、預貯金等の管理・契約・払い出しをおこないたいという動機がもっとも多く、こうした財産管理や身上監護が必要となった時に成年後見人をつける、といった使い方をされている方が多いのが現状です。

この成年後見制度は、2つの制度からなります。

法定後見制度

本人の判断能力が衰えたあと、家庭裁判所によって後見人を選別する制度となります。
多くは親族等が家庭裁判所に申し立てをおこなうことにより手続きをおこないます。

基本的には本人のことを知らない第三者である専門家(弁護士や司法書士等)が選別されるため、本人の状況を細かく把握したうえでの財産管理・身上監護は難しいのが現状です。

後見人には約7割が専門職が選定されていますが、本年、最高裁判所により「後見人は家族が望ましい」と家庭裁判所宛に通知を発状しました。

法定後見人に専門職が選定された場合、本人が亡くなるまで報酬支払いが発生します。
専門職への報酬は本人の財産額、後見事務により家庭裁判所が毎年決定しますが、この報酬により財産が減り続けること・預貯金の引き出し等の際の専門家への連絡手続き等の手間を懸念される方が多く、できれば任意後見制度の利用がおすすめとなります。

任意後見制度

任意後見制度は本人の判断能力が衰える前に、将来判断能力が不十分となったときの後見事務の内容と、後見人となる人(任意後見受任者)をみずから事前の契約によって決めておく制度です。
後見人をつけたい本人が自ら公証役場で公正証書を作成することで、任意後見制度の利用準備となります。

任意後見契約においては、任意後見人を誰にするか、どこまでの後見事務を委任するかは話し合いで自由に決めることができます。

ただし、一身専属的な権利(結婚、離婚、養子縁組など)については任意後見契約に盛り込むことはできません。

任意後見制度の利用をおすすめします

親なきあと相談室 岡山事務局では、可能であれば後見人については任意後見で準備を進めることをおすすめしています。

任意後見であれば、被後見人の事情を理解している後見人をつけることが可能となります。

また、任意後見にかかる費用として、任意後見監督人への報酬が発生いたしますが、これは法定後見の半額程度で収まるため、親なきあとに残すお金をより有効的に使用することができます。

後見制度の適用に重要な、判断能力の確認

後見制度の適用には、後見をつける本人の判断能力の有無が重要となってきます。
障害者であっても、障害の内容やレベルによって全ての判断ができないという訳ではありません。
本人の判断能力を慎重に確認して、制度の活用を検討すべきです。

未成年の場合、本人の判断能力の有無に関わらず、法定代理人である親が真剣を利用して任意後見の契約をおこなうことが可能です。

また、障害のある子に判断能力がある場合は、成人後も任意後見制度を利用することができます。
ただし、判断能力がない子が成人を迎えた場合は、法定後見しか利用できないため、未成年のうちから任意後見によって親が契約をおこなうことをおすすめします。

未成年障害者の親権を利用した『親心後見』

障害のある子に判断能力がない場合、未成年のうちに親の親権を利用し、親自身を任意後見受任者として指定する『親心後見』がおすすめです。

例えば、父の親権を利用し母と障害のある子で任意後見契約を結んだ場合、父が亡くなった後であっても母が任意後見受任者となるため、法定後見に比べ費用を低く抑えることができます。

ただし、将来親が高齢になるまでには、信頼して子を任せられる後任の後見人を探す必要があります。
この後任の後見人には、親族やNPOを選ぶことが多いです。

任意後見契約の流れ

1)契約締結

公正証書として、任意後見契約書を作成します。作成後、公証人が任意後見登記を嘱託します。
これにより、任意後見契約を締結すると、そのことが登記によって明らかになります。

2)後見申し立て

任意後見契約締結後、本人の判断能力が実際に低下してから任意後見を開始します。
この申立は本人や後見人予定者、配偶者、四親等以内の親族が家庭裁判所に対し任意後見監督人の選任申立をおこなう必要がありますが、多くの場合は後見人予定者本人が申し立てをおこなっています。(申立費用は収入印紙・郵便費用等で10,000円弱となります)

3)任意後見監督人の専任、監督

申立がおこなわれると、家庭裁判所で審理がおこなわれます。
本人の判断能力が実際に不十分であると認められると、任意後見監督人が選任されます。
選任後、任意後見契約が発効され、任意後見人が後見業務を開始します。

家庭裁判所で任意後見人が選任されるためには、以下の要件が必要です。
・任意後見契約が登記されていること
・本人の判断能力が不十分になっていること
・他の後見制度が開始していないこと

<後見開始>

4)任意後見人の監督

任意後見監督人は、任意後見人が任意後見契約の内容について適切に後見業務をおこなっているかを監督します。これは後見人の報告によって判断されます。

5)家庭裁判所への定期報告

任意後見監督は、任意後見人の後見業務内容について、年1回家庭裁判所に報告します。


「親なきあと」相談室 岡山事務局では、障害のある子の親が抱える不安や疑問に対応したさまざまなテーマのセミナーを開催しています。

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