お役立ち記事

親なきあとのための遺言書~自筆証書遺言と公正証書遺言~

前回のお役立ちコラムでは、障害を持つ子へ適切に財産を渡す方法として、遺言書を作成しておくことをおすすめさせていただきました。
今回は、その遺言書の方式である『自筆証書遺言』『公正証書遺言』について、それぞれの違いをわかりやすく解説いたします。

自筆証書遺言について

自筆証書遺言は、遺言者の自筆によって作成される遺言書のことを指します。
周囲に知られずに作成することができ、作成における費用もかからないため、遺言に関する秘密を生前誰にも知られたくない方や出来るだけ作成費用を抑えたい方におすすめの方法となります。
自分で遺言書を作成するだけでは遺言が無効にならないか不安だ、といったご相談を受けることがありますが、遺言書を有効にするためのルールはたった3つしかありません。

自筆証書遺言のルール1:全文を自筆で書くこと

この方法で遺言書を作る場合、遺言書は全文自筆で執筆する必要があります。
2019年1月より、遺言書に添付する預貯金や不動産などの一覧を記した『財産目録』はパソコンでの作成も可能となりました。
各ページに署名・捺印は必要となりますが、これにより自筆証書遺言のデメリットは軽減され、より利用しやすくなりました。

自筆証書遺言のルール2:遺言を書いた日付を記入すること

遺言書を執筆する際、特にご年配の方に多いのですが、遺言書作成の日付を「○月吉日」といった表記をしてしまうと、せっかく作成したその遺言書は無効となってしまいます。
日付は正しく記入しましょう。

自筆証書遺言のルール3:遺言書や財産目録には署名と捺印をすること

使用する印鑑は、実印でなくても大丈夫です。認印でも有効となるので、署名・捺印の漏れはないか、しっかりと確認しましょう。

この他にも、間違って書いてしまった場合の訂正方法は民法に厳格に決められた方法を取る必要があるなど、気を付けなくてはいけないポイントもあるため注意は必要ですが、上記3つのルールをしっかりと守った遺言書を作成すれば、遺言は有効に成立します。
また、状況や考えが変わった場合には以前作成したものは破棄して新しい遺言書を書けばいいため、手軽に遺言書の作成・作り直しが可能なことは、この自筆証書遺言の大きなメリットとなります。

自筆証書遺言のデメリット

ただし、自筆証書遺言は遺言書の作成自体へのハードルはさほど高くはないのですが、書いたあとが少しめんどうです。
遺言書を書いた本人が亡くなり、遺言書が見つかった場合、すぐに銀行でお金がおろせたり不動産登記の手続きが出来るのかというと、そうではありません。
家庭裁判所において、相続人の立ち会いのもとで遺言の確認をする『検認』と呼ばれる手続きが必要となります。

また、遺言書を自分で書いてしまっておいたがために、紛失したり亡くなった後に見つけてもらえないというリスクがあります。
誰かに改竄されてしまうようなことがないよう、保管方法も考えなければいけません。
このようなトラブルを避けるため、自筆証書遺言での遺言書作成を選ばれた方で、額縁に遺言書を入れ茶の間に飾っておくといった対策を取られた方もいらっしゃいます。

手軽に書けるというのは大きなメリットですが、不安であれば専門家にアドバイスを受けて作成するか、より確実な公正証書遺言にて遺言書を残す方法もおすすめです。

公正証書遺言について

公正証書遺言は、遺言者のメモや口述をもとに公証人が遺言書を作成します。
作成の際には公証役場に出向く必要があり、証人も必要となるため、作成には時間と手間と費用がかかります。
ただし、確実に遺言内容が実行される仕組みのため、トータルで考えればいちばん安心な方法だとも言えます。

公正証書遺言書は公証役場に保管されるため、無効になったり遺言書が見つからないといった心配は、ほぼ解消されます。
また、作成の際には証人2名の立ち会いのうえで遺言書が作成されます。
その際、自分で知人などに頼むことも出来ますが、適当な人がいない場合には公証役場で紹介してもらえます(別途、費用が必要)
遺言書を実行する際、遺言書の内容を確認し、偽造・変造を防止するための手続きである検認手続は不要なため、比較的スムーズな遺言の実行が可能となります。

公正証書遺言のデメリット

遺言書作成の際、証人と公証人には内容を知られることになるため、そこに抵抗を感じる人にとってはデメリットとなります。
また、公証人へ支払う手数料などの費用がかかります。
公証人に対する手数料は、財産の価値と相続人の人数によります。

公正証書遺言の手数料

(相続財産の額 | 1名分の手数料)
100万円以下 | 5,000円
200万円以下 | 7,000円
500万円以下 | 11,000円
1,000万円以下 | 17,000円
3,000万円以下 | 23,000円
5,000万円以下 | 29,000円
1億円まで | 43,000円

※1億円を超える部分については、金額に応じて、更に手数料が加算されます。
※この費用とは別に、全体の財産額が1億円以下の場合は、11,000円が加算されます。

財産の価額と相続人の人数が増えるほど手数料も増えていき、3人の相続人に1億円ずつ相続させる場合では
43,000円×3人=129,000円
といった手数料が必要となります。
この場合、財産総額が1億円を超えているので、上記表の注意書きにある11,000の加算は必要ありません。
また、証人を知人等ではなく専門職に依頼する場合、1名につき10,000円程度の費用が必要となります。


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